まず前提——「どちらが優れているか」ではない

ゲーミングチェアとオフィスチェアは、そもそも設計思想の出発点が違います。ゲーミングチェアはモータースポーツ用バケットシートの意匠を引き継ぎ、深く倒して体重をいったん逃がす(抜重する)ことを前提に組まれた椅子です。一方オフィスチェアは、一日中まっすぐ座り続ける作業姿勢を、いかに崩さず支えるかを出発点にしています。優劣ではなく、想定している座り方そのものが違うので、まずはその前提をそろえてから4つの構造軸で比べます。

ヘッドレストの有無——首を預けるか、預けないか

ゲーミングチェアの多くはハイバック形状で、頭の高さまで背もたれが伸び、そこに取り外し可能なヘッドレストクッションが付属します。深くリクライニングしたときに首の後ろへ支えを添える設計です。今回紹介するGTPLAYERも、ヘッドレストとランバークッションが付属するハイバック型にあたります。

オフィスチェアは、ハイバックメッシュで背中全体を面で受ける形状(今回紹介するイトーキ サリダ YL6など)が中心で、首まで届くヘッドレストが標準装備されている製品はゲーミングチェアほど多くありません。作業中は視線が前を向いたまま、背もたれに深くもたれきらない姿勢が続くことが多く、首を預ける場面自体がゲーミングチェアより少ない、という構造上の違いがあります。

ランバー(腰椎支持)の形——内蔵の可動式か、付属クッションか

腰椎の前弯(前向きのカーブ)をどう支えるかも、両者で作りが異なります。オフィスチェアは、背もたれの内部機構として独立式・可動式・上下調整式のランバーサポートを組み込んでいる製品が中心です。たとえばSIHOO B100は独立式、COFO Chair Liteは可動式、サンワダイレクトのモデルは上下調整式と、腰椎のいちばん凹む位置に支えを合わせにいく機構がそれぞれ違います。

ゲーミングチェアは、背もたれ本体とは別に取り外し可能なランバークッションを紐やベルトで固定する方式が主流です。位置をある程度動かせる自由度はありますが、内蔵の可動式ランバーのように機構として上下・前後に精密に追い込む作りとは違い、「クッションを挟む」というシンプルな構造です。腰椎への当たりを細かく微調整したい人はオフィスチェアの内蔵式ランバー、まず手軽に腰の後ろへ支えを足したい人はゲーミングチェアの付属クッションが構造として向いています。

座面の硬さと奥行——面で受けるか、包み込むか

座面の作りにも違いがあります。オフィスチェアはメッシュやウレタンの座面が中心で、座面の奥行を調整できる機構を持つ製品があります。FLEXISPOT C7はその代表で、奥行を体格に合わせられると、坐骨と大腿裏の両方で体重を受けやすくなります。座面の形状はおおむね平らで、体重を面で受ける発想です。

ゲーミングチェアはバケットシート形状で、座面と両サイドのサイドサポートが体を左右から包み込む構造です。Dowinxのモデルはポケットコイルを座面に使い、深く倒したときの沈み込みと反発を両立させる作りになっています。座面の奥行を調整できる機構は少なく、体格に対して座面のサイズが固定的に決まる点は、オフィスチェアとの構造上の違いです。

リクライニングの思想差——姿勢を保つか、大きく逃がすか

もっとも構造の差が出やすいのがリクライニングです。オフィスチェアは、背と座面が連動して倒れるシンクロロッキングを備える製品が多く、リクライニング角度自体は120〜135°程度に収まる製品が中心です。作業姿勢からわずかに背もたれへ体重を預ける、という「姿勢を大きく崩さない範囲での抜重」を想定した思想です。

ゲーミングチェアは、Dowinxのように170°というほぼ水平に近い角度まで倒せる製品があります。作業で前傾する時間と、大きく倒して坐骨から体重をいったん完全に逃がす時間を、はっきり切り替える思想です。休憩のたびに深く倒したい人にはゲーミングチェアの可動域が構造として合いますが、逆にずっと浅い角度で作業に集中したい人には、オフィスチェアの限定的な可動域のほうが姿勢を保ちやすい、という考え方もできます。

体格・用途別の向き不向き(構造からの整理)

構造の軸 オフィスチェア ゲーミングチェア
ヘッドレスト 標準装備は少なめ。ハイバックメッシュで背中全体を面で受ける製品が中心。 取り外し可能なヘッドレストクッションが付属する製品が中心。
ランバー支持 独立式・可動式・上下調整式など、内蔵機構で位置を追い込める。 取り外し可能な付属クッションをベルトで固定する方式が主流。
座面 奥行調整できる製品があり、平らな面で体重を受ける発想。 バケットシート形状。左右から体を包み込み、奥行は固定的。
リクライニング シンクロロッキング中心。120〜135°程度、姿勢を保ちやすい可動域。 製品によっては170°近くまで。大きく倒して抜重する可動域。
向きやすい用途 デスク作業の姿勢を長く保ちたい、細かく調整を追い込みたい人。 作業と深い休憩を頻繁に切り替えたい、体を包まれる感覚を好む人。

※ 上表は各商品名に明記された仕様に基づく編集部の整理であり、効果・効能を保証するものではありません。座り方の好み・体格・作業内容によって感じ方は異なります。

「かなめ」がこの記事で伝えたいこと

坐骨の一点に体重が集まり続けるとき、椅子に問われているのは「高級かどうか」ではなく、骨盤と仙骨がどこで、どう支えられているかという一点です。ゲーミングチェアは深いリクライニングで体重をいったん座面から逃がす構造、オフィスチェアは内蔵ランバーと座面調整で姿勢そのものを面で支え続ける構造——どちらも「体重をどこで、どう受けるか」を組み替えるための、別のアプローチです。

効果を保証するものではありませんが、まず自分の座り方(前傾で作業する時間が長いか、休憩でどこまで倒したいか)を思い浮かべ、そこにどちらの構造が噛み合うかで選ぶのが、後悔しにくい選び方だと考えています。

この記事で紹介した椅子

構造の軸の違いがわかりやすい、オフィスチェア3脚・ゲーミングチェア2脚を選びました。詳しい仕様・価格は各リンク先でご確認ください。

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編集方針: 本記事は設計室が「腰椎・骨盤・坐骨がどこで、どう支えられているか」を基準に、ゲーミングチェアとオフィスチェアの構造を整理したものです。感じ方には個人差があります。医薬品ではない生活用品について、腰痛の改善・軽減・解消や姿勢の矯正といった医療的・効能的な効果は標榜していません。仕様・角度・サイズはAmazon・楽天市場の商品ページで最新の情報をご確認ください。本記事に掲載しているリンクはAmazonアソシエイトプログラムおよび楽天アフィリエイトによるもので、リンクから商品が購入された場合に紹介料を受け取ります。